Choco










「君から甘い匂いがする」

首を捻っていたアメリカが、驚いたように言った。
日本茶を二人分の湯のみに注ぎ終わった日本は、急須から垂れる雫を切りながらアメリカの顔を見た。

「香水も何もつけておりませんよ。今日は甘い物を作ったり食べたりもしていませんし」

蜜柑の匂いでもないでしょう?とカゴにこんもり盛られた蜜柑を取る。
アメリカはこたつに入ったまま身を乗り出し、日本の近くですんすんと鼻を鳴らした。そしてぱっと顔を輝かせる。

「わかったぞチョコレートだ!」

俺のおやつに用意してくれたのかい?!と嬉しそうに笑う。
そう言えば彼のところのチョコレートはチョコ自体が甘い上にピーナッツクリームやキャラメルヌガーが標準装備だった。

「私からそこまで匂いますか?!あなたの国のチョコ甘すぎるんですよ!」

そんなの日本国内で巻き散らかしたら既に公害です!みなさんあの甘さに倒れてしまいます!と日本は青ざめて手の中の蜜柑を落とした。

「ううん違うよ。多分君の国のかな。甘さが足りないんだぞ」

それはあなたの見解です!と顔を引きつらせたところで、思い当たることがあった。

「あぁ、国の影響かもしれませんね。私の国のバレンタインデーは女性が意中の男性にチョコレートを贈る日なんです」
 
今頃デパートやケーキ屋では多くのチョコレートが売られ、また多くの女性が手作りのチョコレート菓子を用意していることだろう。
歩けばそこかしこからチョコレートの香りがする程にチョコだらけの筈だ。

「良い日だね!いっぱいチョコレートが食べられるなんて最高じゃないか!」

「お菓子会社の陰謀とも言いますけどね・・・ところで、寒いのですが」

片手間に、アメリカが日本の衣服をぺろりと捲っている。暖房を強くしていないので露出したそこだけ寒い。

「だってこんな美味しそうな匂いさせて俺、もう我慢出来ないぞ」

アメリカが日本に口づける。目を見開く日本をよそに口の横、頬、と軽いキスをしチョコを舐めるようにぺろりと舐める。

ちゅう、と吸い付く音がするほどの濃厚さは、キスを超えて何かを味わうようだ。

「今の君なら、どこにキスしてもチョコの味がするんじゃないかな?試させてくれよ!」


確信犯めいた笑顔に、日本は何も言えず口をぱくぱくとさせ、アメリカはその唇にまた吸い付いた。


END

10.2.13

舐めたいキスしたい食べちゃいたい!










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