※関西弁間違ってたらごめんなさい…



La Declaracion de amor






「俺な、あーいうカップルってええと思うねん」

そうスペインが口にしたのは、河原を日本と並んで歩いている時だった。
ほてほてとゆっくり歩く二人はそれぞれに一つずつ大きな袋を提げていた。
中身は主に色鮮やかなパプリカ・瑞々しいレタス・ショートパスタと美味しそうな魚介類。それとたっぷりのトマト。
「ご馳走したるで!」とのスペインの言葉に甘えて、二人で夕飯の買い出しに行った帰りであった。

「はぁ…あ、先ほど後ろを通った方々ですか?」

日本が思い出したのは、河を見下ろす傾斜の草はらに座っていた一組の男女だ。
くっついていた二人は学生服を着ていた。
仲睦まじい様子におや、と思ったものだがスペインと日本が後ろを通った時二人はキスをしていたのだ。
それに日本は一瞬驚いたが通り過ぎてもうお互いの声も聞こえなくなった頃「お若いですねぇ」と苦笑して呟いたのだ。

「それそれ。なんか二人だけの世界―って感じやったなぁ」
「ええ。お外であることも忘れているようでしたねぇ」

くすっと笑う日本にスペインは頬が赤くなるのを感じた。
外見から連想される子供らしいのとも女の子らしいのとも違う、スペインには日本らしいとか言えない笑い方。
(花に例えたら…なんになるんやろ)
スペインがちらと日本の方を窺うと、がくんと日本の頭が下がった。

「あっ」
「おわっ大丈夫?!」
小石につまずいた日本の服を引いて、かろうじて日本は踏み止まった。
日本の両手は体を守る事より転ばない事よりも咄嗟に荷物を守る方向に向かってしまったらしく、
両手でがしっと買い物袋を抱き締めている。

「はい、なんとか…」
「危ないなぁ」
「すいません。あの、ところでドレッシングって買いましたっけ?」

日本がスペインの買い物袋を覗き込む。

「私の家、今ドレッシング切らしてしまっていて…」

確かスペインはサラダも作ると言っていたはずだ。日本はどちらの袋にもそれが入っていないことを確認し眉根を寄せた。

「ありませんねぇ…忘れていました。どうしましょう?」

スーパーに戻るか、と困り顔の日本にスペインはにかっと笑った。

「作ればええよ!オリーブオイルはあるんやろ?美味しいの作ったるよー」
「え、それはいいですね!楽しみです」

スペインは結構大雑把な所があるが、料理は格別に上手い。
日本は今までに食べさせてもらった料理を思い出しごくんと唾を呑んだ。
日本は今にも鼻歌を歌いそうに歩きだす。

「ほら早く帰りましょう、スペインさん!」

ウキウキした様子にスペインは笑顔で少し駆け足になり、日本の横に並んだ。

「さっきカップルの話したんにこれじゃあ」
「これじゃあ?なんですか?」

遠くから子供のはしゃぐ声が聞こえていた。きっと家路についているのだろう。
今日は天気が良かったから本当に気持ちが良かった。
日本はポチくんも散歩として連れて来たい所だったが、スペインとの買い物には慣れていない。
どれくらい掛かるかわからなかったし、店の外で待たすのも申し訳ないのでお留守番していて貰ったのだが、
これは後で改めてポチくんのお散歩に来ようと思った。夕飯後にスペインも誘って腹ごなしなんてどうだろう。

「うん、あんな風に外で1cmも離れずくっついていられるってええなーって思ったんや。若いなぁって微笑ましく見られながら」

スペインにはそのように思う相手はいるのだろうか。日本はスペインを見上げた。
日本より高い背丈。ラフなファッションがよく似合うすらりとした躯。やけた肌に眩しい明るい笑顔。太陽の様な人。
こんな人なら日本の所では引く手数多だろうが、スペインの所では違うのだろうか。
それとも、自分達と同じような国が好きなのだろうか。
(あれ、なんでしょうこの感じ)
会議などで顔を合わせる面々が浮かび、なんとなく気が沈んだが日本はその理由がとんと思いつかなかった。
自分の思考に首を傾げ、話の続きを促す。

「それで?」
「ん?でもこれじゃ俺たち家でゆっくり料理する夫婦みたいやんなぁ」
「はい…?」
「もしくは同居し始めやな!お互いの料理レパートリーをわかってない辺り!」
「はぁ…」

嬉しそうなスペインがよくわからず、日本は頭からはてなマークが飛び出しそうだ。
しかし悲しい習性というか曖昧な相槌を返す。
スペインが日本の手の空いている方に後ろから回り込み、袖を引いた。

「なあ」
「はい、なんでしょう」

日本が振り返ると、スペインはスーパーの袋をしっかりと片手で持ち
もう片方の手で日本の袖、そこから手と辿り指先を握ってきた。

「そんでな、夫婦や同居の前になるもんがあると思うんよ」

日本の手を引き寄せて自分の口元へ。ちゅ、と口づけて、スペインは日本を見つめた。
にこ、と笑って手を降ろす。まだ日本の指先は握ったままで。  


「そーゆーわけで大好きや!俺の恋人になって!」
「……え?」


スペインの後ろでは、沈みかけの夕陽が眩しいほどに輝いていた。
まるで情熱の国を応援するかのように。

しかし日本はそこから先が考えられない程頭が真っ白になり、スペインに握られた指先だけは熱く熱く、
まるで彼に情熱を移されたようだと思ったのだ。



end

10.5.25



La Declaracion de amor …俺からの愛の告白ってこと!




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