ちびっこたちのワンダーランド ※大きいみんなも大好きです、でもちびっこは正義だと思っています。 ※時間軸?時代考証?タイム スリップとかしちゃえばそんなの関係無いよ。 ※プロイセンがひどいブラコンです。 ※似非メルヘンが書きたかった。同時につっこみどころの わからないものが書きたかった。 ※以上が許せない方はブラウザバックボタンを押して下さい。違いますそれはプロイセンの頭です。 いつもの公園でのことでした。 プロイセンの投げたボールを追いかけたら、ボールは茂みに入って行ってしまったのです。 「待ってて兄さん。俺が取って来る」 「おー行って来い」 ドイツは最初茂みに潜り込もうかと葉と枝の間を覗き込みましたが、そこへ入るのは止めました。もうボールの位置は確認出来ません。それに兄さんが着せてくれた白いシャツと黒い吊りズボンを汚してしまうと思ったからです。 慌てて茂みを回り込むと、大きな樹が立っています。上が見えない程大きな大きな樹です。 あれ?こんな樹あっただろうか。 ドイツは不思議に思いました。公園にこんなに大きな樹はなかったように思ったからです。 でもいつも芝生の広場で遊ぶばかりでこんな茂みの方まで来たことがなかったので、確証はありません。それよりもボールを探すことが大事です。 ドイツはすぐにボールを見つけました。樹の近くをまだコロコロと転がっています。 ドイツは駆け足でボールを拾いに行きました。 「あれ?」 ドイツが声を上げた頃には、小さなドイツは真っ暗な穴の中を頭から落ちていました。 (え、あ、え、なんだこれ!) ドイツは慌てます。穴がいつまで経っても終わらないのです。真っ暗な穴の中、ドイツはどこまでもどこまでも落ちて行きました。 「だいじょぶですか」 「あ、あの、どうしよう…」 ぱちり。 目は唐突に覚めました。しかしドイツは自分の状況がわかりません。 上から黒い髪の子供と、その子より小さい茶色い髪の子供に顔を覗き込まれていたからです。 「…生きて、いるのか」 「はい。でもあちこち汚れちゃっていますね」 黒い髪の方の子が言います。まだ八つ位、ドイツより少し年下に見えるその子は不思議な服を着ています。まるで色とりどりの布を繋ぎ合せただけのような、見たこともない服です。ピンク色のボールを抱えているその子を、ドイツは人形みたいだと思いました。何故なら表情があまり変わらないのです。淡々と静かに、その子はドイツに話しかけます。 「体、痛くないですか」 「ああ大丈夫だ」 ドイツは自分が地面に寝転がっていることに気付いて、手を付いてゆっくりと起き上がりました。 「だいじょうぶ?だいじょうぶ?」 小さい方の子供がドイツの膝をぺたぺた触りながら聞いてきます。その子は自分のことでもないのにぐじゅぐじゅと涙声で、今にも泣き出しそうでした。 見たところ怪我も無いし痛いところもないので、ドイツはその子の頭を覆う三角巾越しにふわふわと頭を撫でました。 「ああ。ありがとう」 小さい子は安心したのかにこっと笑います。 エプロンドレスに、手にはデッキブラシ。こんなに小さいのにもうどこかで働いているのでしょうか。すごいなぁ、とドイツはその子の頭を更にわしわしと撫でました。えへへとその小さい女の子は嬉しそうにしています。 「これはあなたの物ですか」 あなたの近くに落ちていました。そう言って、黒髪の子が指し示すのはドイツが探していた黄色いボールです。 「兄さんのボール!」 ドイツはボールを両手で捕まえました。良かった、なぜかこのボールとずっと離れていた気がしたのです。ぎゅっとボールを抱きしめると、どこかほっとしました。 黒髪の子が、す、と抱えていたピンクのボールを差し出しました。 「私、この毬を池に落としてしまったんです。思わず身を乗り出してしまったら池の淵で足を滑らせて。池に落ちたはずなのに、気が付いたらここにいたんです」 どうやら、この子も『毬』というボールと一緒にここに落ちて来てしまったようです。 それにしても見た目よりしっかり話す子です。じゃあこの子もそうなのかな、と小さい子を見ると、手をぱたぱたさせて一生懸命話します。 「えっと、ごはん探してたの。それで箱を覗き込んだら、箱の中真っ暗で、穴だったの!」 どうやらボールを探していたわけではないようです。デッキブラシと一緒に落ちるとは、どんな落ち方をしたのでしょう? ドイツはきょろきょろと周りを見回しました。 穴に落ちたのだから穴の底だろう、と思うのですがどうも周りの様子がわかりません。真っ暗なわけではないのに何があるのかよくわからないのです。 明かりもないのにぼんやりと周りが見えるような、ステンドグラスで出来た壁から光が差し込むような空間です。しかし左右の壁があっても、後ろと前に道の終わりが見えません。 ここはどこ? そんな思いを込めて二人を見ましたが、二人も首を傾げるばかりです。 「私もわかりません。帰ろうと思って歩いていたら、この子が道端で泣いていたのです」 「うん。だから一緒に歩いていたら、君が倒れてたんだよ」 それじゃあここにいてもしょうがない、と三人はゆっくり歩き始めました。 「早く帰らなきゃ、兄さんが心配する」 もし穴に落ちたなら、帰ってこない自分を探すことでしょう。兄は心配性なところがあるから、きっと大騒ぎになってしまいます。この間一人で買い物に言った時は、こっそり最初から最後まで一定の距離から見守っていたくらいです。途中で気付いた時プロイセンは店の看板の陰に隠れていましたが、ドイツは気付かないふりをしてあげました。 「私も、にーにが心配しています。にーにと山で栗拾いをしている途中だったんです」 黒い子は不安そうに眉を顰めました。それはその子が初めて見せた表情の変化でした。 「君の名前はなんて言うんだ」 「日本です」 「君は」 「イタリアです!」 「そうか。俺はドイツだ」 話している間も誰一人歩みを止めません。二人が疲れないかとドイツはたまに横を見ましたが、二人ともドイツと同じ気持ちのようです。 「私が抱っこしてあげましょうか」 「ううん、大丈夫だよ。早く戻らないと、オ 一生懸命付いてくるイタリアの声はよく聞こえませんでしたが、誰かの為にその子も帰りたいのです。 ドイツはボールを握っていない手でその子の手を繋ぎました。 「ほら」 「わあっ」 「あ!ずるいです」 悪戯を思いついたような日本の声と一緒に、ドイツの肩に手が乗りました。日本が空いている手でドイツの肩に掴まったのです。まるで奇妙な電車の連結みたいでした。 「くすぐったいぞ!」 「いいじゃないですか」 振り返ったら日本はにこにこ笑っていて、ドイツはびっくりしました。 きゃっきゃと笑うイタリアの声にここで日本に手を離させるのも馬鹿らしいことに思えてドイツはしょうがないなと一緒に笑います。 淡い光の空間に三人の楽しげな声が響きました。 「ここ、どこに繋がっているのですかね!」 「行ってみなきゃわからないだろう」 「パスタ食べたいなぁー」 「ぱすた?それはどのような食べ物でしょう」 「あのねーすっごく美味しいんだよー」 「俺は帰ったら熱々のブルストが食べたい!」 「私は栗ご飯がいいです!」 「わー今の壁すっごく綺麗!見た見た?」 「海のような青か?」 「うん、綺麗だったよ!絵に描きたいなぁ!」 「にーに、心配してないでしょうか…」 「君も兄がいるんだな」 「はい。すっごく心配性なんです」 「うちもだ。兄を持つとみんな大変だな」 「うちのロマーノ兄ちゃんはえばりんぼうなんだよ」 「ほらほら前を見ていないと危ないですよ!」 「デッキブラシ落とさないか?」 「うん!ちゃんと持ってるよ!」 「ドイツさんもボール、もう落としちゃ駄目ですよ!」 駆け足で、言葉の語尾も跳ね上がります。走っても走っても疲れないことにも気付かない程、三人はおしゃべりを続けました。 走っているうち、「あ!」と声を上げたのはイタリアでした。 「あっちからトマトの匂いがした!」 小さいイタリアがドイツの手を引いて急ぎます。 ドイツは歩調を早め、掴まっている日本もそれについていきます。 「野山の香り…?」 後ろから日本の不思議そうな声がしました。 引っ張られるように走り続け、ぱっと目の前の光に目を思わず閉じました。 「うわっ」 足元に、地面の感覚がありません。またどこかに落ちているのです。目の前にあった道の終わりに気付かなかったのでしょう。 「ヴェスト!」 呼ぶ声が聞こえたこと、それだけがドイツの最後に覚えていることでした。 「全く人騒がせな!木箱の中で寝ているなんて思いもしませんでしたよ!」 「まあまあ、いいじゃないですか無事でよかったですね、オーストリアさん」 イタリアが目を開けると、そこはベッドの中でした。 目の前ではオーストリアさんがぷすぷす怒っています。 ハンガリーさんによると自分は木箱の中でぐっすり眠っていたそうです。 「おかしいな、あれ?」 いつの間にあの不思議なところから帰って来たのでしょう? それともあれはただの夢だったのでしょうか。 とっても綺麗な場所で優しいお友達が出来たのに。 「全く、今度から眠い時はちゃんと最初からベッドでお眠りなさい!」 オーストリアさんがちらりとドアの方を見ます。 「あなたが見当たらないと、一番心配して探し回ったのですよ」 ドアの隙間から黒くて大きな帽子が覗いています。 イタリアはぱっと顔を輝かせて、その子の名前を呼びました。 「日本すまないあるぅぅ!」 日本が目を開けると、中国は泣いていました。日本は目をぱちくりさせ、抱えている毬を見つめます。毬はしっとりと濡れていました。 「私…一体」 「日本が池に落ちそうだったから、我思わず日本の足掴んじまったあるよ!そしたら日本、池には落ちずに済んだけど頭を地面にぶつけたある!」 「どんな掴み方したらそうなるんですか!」 それで日本は気を失っていたようです。心なしか額も痛みます。 それにしても不思議な気分です。長い長い夢を見ていたような気がしていました。金糸の様な髪の男の子、小さくて泣いたり笑ったりと可愛らしい子。不思議な子たちと出会ったあの場所はなんだったのでしょうか。臨死体験…とも違う気がします。あそこは聞いていた地獄とも極楽とも違い、特にあの小さい子とは初めて会う気がしませんでした。 「大丈夫ですよ中国さん。さぁ、栗拾って帰りましょう」 「うう、良かったあるよー…」 ぐすぐす泣く中国に申し訳なくも面映ゆく、日本はくすぐったい気持ちで中国の手を握りました。 「ヴェスト!ヴェストおい目を覚ませ!!どうしたんだおいヴェェストォォォ!!!!」 「ちょそんな揺さぶったらドイツ吹っ飛んじゃうから!っていうか意識失ってる子揺さぶっちゃ駄目でしょ!」 「あははー洒落にならんでー?」 ドイツが目を開けた時、頭がグラグラと揺れていました。というか、身体全体がぶんぶんと振り回されていました。ドイツはジェットコースターに乗っていたかと思いましたが、振り回される視界の中で銀の頭が見えたので、ああ兄さんに振り回されているんだとわかりました。 「にいっ、さん、いた、痛いguらうがあうsf」 「ヴェストォォォォォ!」 「あー今度は絞めるな弟死んじゃうよー」 「あははプロイセンは兄馬鹿っていうかただの馬鹿やんな!」 プロイセンからフランスとスペインが引き離してくれた頃、あれ二人はいつからいたんだろうとドイツは不思議になりました。そう思った頃には、またプロイセンにぎゅうぎゅう抱き締められていました。 「兄さん苦しいんだが」 「うわああああ俺様どうしようかと思ったぜー!!」 「兄さん話を聞いてくれ」 「わー冷静になるの早いなぁー」 「そうだね、お兄さんも吃驚だよすごいねドイツ」 プロイセンは話にならないので、ドイツはフランスとスペインを見上げました。その間ぐちゃぐちゃに泣いているプロイセンがドイツの胸の辺りに顔を押し付けて来て、シャツに涙と鼻水が付いていましたがもう気にしないことにしています。 「なんかねー、ドイツがボール取りに行ったまま戻らないから探しに来たら、林の中に倒れてたんだって」 「大変やったでー。こいつ近隣諸国のICU(集中治療室)全部動かすとこやったわぁー」 「それは…ごめんなさい」 「うん、処理も何もしといたけど、ほとんどこいつのせいだからドイツは気にしなくていいよ」 フランスに嫌味を言われても聞こえていないのか、プロイセンはドイツの胸に顔を埋めて「俺様はよぉー…お前が可愛すぎて天罰が当たっちまったかとよー…」と鼻を啜っている。シャツに鼻水が染みてちょっと冷たかった。 「ボール…」 兄の足元に探していたボールが転がっていることに気付いた。あとでちゃんと拾って持ち帰らなきゃ、とドイツは心の中で思う。 さっきまで、まるで兄さんに聞いた童話のようだった。落ちた穴の先、不思議な体験。一緒に歩いたあの子たちもちゃんと元の場所に帰れただろうか。帰れているといいと思ったけれど、不思議と名前を思い出せない。顔も話したこともなんとなく浮かぶのに、名前だけあの穴の中に落としてきてしまったみたいだ。淋しいけど、また会えたら嬉しいと思う。 「兄さん、兄さん」 「んー…?」 顔を上げた兄さんは、涙目でまだ不安そうな顔をしていた。 「兄さん、ただいま」 帰ってこれてよかった。呼んでくれてありがとう。 言いきれない色んな言葉も夢の話も。言いきれないから一番言いたかったことを言って、ドイツはプロイセンににっこり笑ったのだった。 「プロイセン!ドイツ目覚めたばかり!思い出して!」 「お前今その火事場の馬鹿力出さないでええってー。たまにロマーノもそんな顔になってるけどなぁ」 「お前もそんな抱擁してんの?!ドイツ確かに可愛かったけど!それまずい!ドイツ顔青くなってる!」 「あははープロイセンには聞こえてへんよぉー」 「ちょこの地獄絵図どうにかしてぇぇ!!お兄さんもう限界だから!」 終わり 10.4.20 うちの子の可愛さは世界一! |
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