嬉しいこと








「お前ら早く手ー洗ってくるあるよー」

香港さんが“なにこれ?”とで も言いたげな目で私を見てきた。
ええそうですよね不思議ですよね。私もすごく不思議です。
中国さんご機嫌すぎです。ものすっごいにこにこ声ですよ。
今ですか?今は台所で中華鍋振り回していらっしゃいますよ。いえ暴れているわけではなく。
匂いからして何か炒め物を作っていらっしゃるのだ と思います。料理の手際すっごくいいのですよあの方。


思えば私がこちらへ招かれた時からそうでした。
「あいやー遅いある!待ちくたびれたあるよ!」と文字にするときっと怒っているように見えるんでしょうけどね、それはもう笑顔でした。
バーガーを前にしたアメリカさんのように。パスタを前にしたイタリアくんのように。ビールを前にしたプロイセンさんのように。
これだけでどれだけ笑顔だったかわかっていただけるでしょうか。
あとはそうですねぇ、大量のトマトを前にした時のスペインさんもあんな感じだったでしょうか。

おやおや話がずれましたね。とにかく中国さんが天 にも昇りそうなほど上機嫌だったのです。
訝しく思いながらも玄関から居間に行ったところ、無言で中国さんを見ていらっしゃる台湾さんに香港さんと、
多分何も考えていない韓国さんが座っておられました。
そして中国さんは「まだ夕飯の準備が途中ある、少し待つよろし!」と台所へ行き…冒頭に戻ります。
ちなみに中国さんファン垂涎のエプロン姿です。

普段でしたら「中国さん萌えです、ツインテにしておたま持ちましょう!」と私もカメラを構えて言うのですけど。
ああいうやり取りはツッコミがあってこそ成り立つのですよね。今のルンルン中国さんには流されてしまいそうです。


「… 行きましょうか」
台湾さんが顔を引きつらせながら歩き出したので、私と香港さんも頷いて台湾さんについていきました。
手洗い場で手を洗う為です。そこでは既に韓国さんが大声で歌を歌いながら手を洗っていらっしゃいました。
「うるさい」
「香港口悪いんだぜ」
「はいはい韓 国さん、手はちゃんと拭きましょうね」
タオルを差し出すと、韓国さんは歌を鼻歌に変えながらスキップするかのように歩いて行きました。
中国さんのお料理の邪魔をしないといいのですけど。

私は香港さんの後に蛇口を捻り、水と石鹸で手を洗いました。
「あんなに中国が喜ぶようなことありましたっけ?」

台湾さんが後ろから覗き込んで聞きます。しかし私にも全く心当たりが有りません。
「景気とか急に上 がりましたっけ」
「日本さんプレゼントでもあげましたか?」
「急なお呼びでしたから、出掛けに季節の和菓子をお持ちしましたけどね」
「先 生はいつも気にせず食べてるっスよ」
「えーお饅頭ですか?!楽しみです」
 台湾さんはにっこり笑ってくださいますが、確かに中国さんは何を持参しても
「ふん、今日の菓子もまぁまぁあるね。我のところの胡麻団子も食うある」と当然のようにぱくつくばかりだ。
しかし彼がいつも(私のところの女子高生のように)大喜びする某猫さんのグッズは用意出来なかった。お土産が理由ではない気がする。

「パンダ関連でしょうか…」
 害も無いですし放っておきます?と尋ねれば尋ねるで、微妙な顔をされた。
「害はないけど気味が悪いスよ」
「わかるー。あの人に悪気が無くても何か良くないこと、かも…」
そんなことありません!中国さんはそんな人ではありません!と否定できないのが悲しいところです、申し訳有りません。


さて食卓についたところ、テーブルの上は大層なご馳走でした。
卵の少し辛いスープ、花巻というパンのようなものに、私が 前に好きだと言った野菜と海鮮の炒め物もあります。
他にも2,3品ほど。皆さんの表情を伺ったところどれも皆さんの好物のようです。

これで中国さんがご機嫌だということも確定事項となりました。
今はうきうきと一人一人の前に温かいウーロン茶を配っておられますが。

「中国さん、今日は何かのお祝い事でしたっけ?」
「あー料理作りすぎたある?我もやりすぎたと思ったあるよー」
あー眩しいほどの笑顔ですね中国さん。

意を決して聞いた私に続けとばかりに、台湾さんが身を乗り出します。
でもお箸を握り締めているほど食べたいのでしたら、食べ始めてからでもいいと思いますよ?
「何?いい食材でも手に入ったの?」
「我のところの市場はいつもいい材料ばかりある」

ふむ、それでもな い。

「幸せを呼ぶパンダでも買ったんスか」
それはあなたのところの商品でしょう。
「兄貴―食べていいんだぜ?!」
ああもう食べてくださいお好きにどうぞ!

韓国さんのKYな態度に私を始め中国さんの真意を知り隊(今命名です)はため息をつきましが、
中国さんの「そうあるね。冷めないうちに食べるある」との言葉にとりあえず食事に手を付け始めました。

どの料理もとても美味で、さすが中国4000年の味!と言ったところです。
いつも自分で食事の用意をする事は私は苦ではありませんが、人に作っていただいた料理というのはまた格別なものがあります。

と、スープを飲んだ中国さんが皿をテーブルに置き、噛み締めるように言いました。
「本当に今日はいい 日あるなぁ」
なんですと?!と私達(花巻に夢中な韓国さん除く!)はバッと彼を見ました。
「なんかあったんスか」
「んー?」
にこにこにこ。中国さん嬉しそうすぎますよ。お花が周りを飛んでいるようです。
中国さんは私達の顔を見回し、その花を全て開かせるようにぱっと笑いまし た。


「だってお前らが揃ったある!一緒に食事も出来て、今日も本当にいい日ある!」



「あれ?お前らどうしたあ る?もっと食べるある」
「恥ずかしい人ですね…」
「me to…」
「ううー悪気はないのよぅ…でも恥ずかしいぃー…」
「兄貴これお代わりなんだぜ!」
「わ、わかったある??」


終われ

10.2.17

こいつらのいちゃいちゃが本当に好きです、同志は嫁に来ればいい。






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