ある雪の帰り道




 珍しく恐ろしいくらいの雪が積もった日。

SOS団全員での帰り道はそれはもう賑やかなものになった。
ハルヒは雪を初めて見た雪兎のように白銀に突っ込んでいく。
朝比奈さんは嬉しそうだが足取りは見ているだけで危なっかしい。
長門はしゃがみこんで雪を掴み無表情で雪玉を丸めていた。


「…で、お前は行かないのか?」

 隣で笑みを浮かべている男に声を掛ける。
ちなみに俺は傍観組だ。わざわざ雪遊びでぐしょ濡れになる理由もない。そんなのは子供の頃散々経験した。
「僕のキャラではないでしょう」
「…それ、普通の人間が言ったらとんだナルシスト野郎だと思うぞ」

 古泉がそういう理由で言ってるわけじゃない、っていうのは知っているんだけどな。
しかし俺はこの時、肩をすくめて情けない顔で笑うこいつが妙に淋しく見えた。
まるで自分の欲しいものを諦めてしまった子供みたいに。
そんなのは俺の主観だろう、しかし俺までその気持ちが感染したように、胸に何か落ちた。滴のように心を冷たくする何かが。

 それを振り切るようにしゃがみ、手袋をはめた手を雪に突っ込んだ。
手袋、防水じゃないからもう家で干すまではめてられんだろうな。
「どうしました?」
 手の上には出来上がった、拳より一回り小さい雪玉が二つ。
勢いをつけて立ち上がり古泉の襟を後ろから引っ張る。
雪玉の一つをそのまま背中に投げ込んだ。

「うわあああっ?!」
「ぷっ…!」
 慌てる古泉に噴き出しながら背を向けて走り、ニヤリと笑ってみる。

「雪合戦でもするか?」
 と、不意打ちでもう一個の雪玉を投げつける。
クリーンヒットするかと思ったそれを、古泉は片手で受け止めた。
「受けて立ちましょう」
 ・・・しまったこいつ球技が仕事みたいな奴じゃねぇか!
 しかし時既に遅し、雪だるま作りに励んでいたハルヒが「なに、雪合戦?!それなら全員でやるわよっ!みくるちゃんと有希も!」なんて言い出している。
 しょうがない、とりあえずこいつには負けないようにしよう。案外せこい球とか投げてきそうだしな。
 苦し紛れに掴んだ雪をそのまま投げつけた。



真っ白な雪が、パウダースノーのように晴天の光の中を飛び散る。
その向こうで、古泉が満面の笑みで俺に笑いかけていた。


 たまにはこんな風に,はしゃぎまわるのもいいだろう?






end





08.2.10



そんな風に笑ってくれたら それだけで嬉しいから







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