「金木犀」
いつもの道を歩く休日の昼過ぎ。どこからか甘い匂いがした。
柔らかいような、でも確かに存在を主張する強い香り。
コンビニ帰りの足を止め惹かれるように視線を斜め上に上げた。
少し背の高い木に、オレンジ色の小粒の花が寄り添うように付いている。名前は…そうだ、金木犀。
もう、そんな季節か。 ここ数日肌寒さを感じるわけだ。
面倒臭くて先延ばしにしていたけど、衣替えが必要かな。
ぼんやりそんなことを思いながら、花の香りを取り入れるように息を吸った。
いい香りだ、と思うと同時にうかんだのは何故かあの人の顔。それも珍しい笑顔。
自分の頭の毒され具合には失笑せざるを得ない。そんなに会いたいのだろうか。明日になればまた会えるというのに。
しかしこの香りが彼を連想したのは不思議だった。
彼は甘い香りを発しているわけないし、彼と金木犀について会話をしたこともない。
「(共通するのは…幸福感とか?)」
彼に言ったら苦い顔をされそうだな。花の甘い匂いであなたの笑顔がうかんだなんて。
歩き出せばコンビニ袋の中が揺れた。
「どっちも感じさせるのは幸福、か…」
とりあえず帰ったら彼に電話しよう。そう思ったら自然に顔が綻んだ。
End
07.10.11
甘い香り 優しい笑顔によく似てる
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