俺を見る古泉はよくわからない顔をしている。
それは泣きそうにも見えて
悔しそうにも見えて
でも諦めているようにも見える顔だ。
高校生の分際でよくそんな複雑な表情が出来るもんだと思うね。





だけど何が嫌って、俺がそれに気付いて話しかけると、取り繕ったように笑うお前の顔が俺は一番嫌なんだよ。
笑えば誤摩化せると思ってんだろうな、きっと。いや間違いなく。















朝、古泉に会った。首を回す仕草がらしくなくて、別人かと思ったけど。
あんなにきっちり制服を着こなし嫌みな程背筋を伸ばして歩く男を俺は他に知らない。

「早いな」
「・・・ええ」

俺の顔を見て、目を見開く古泉。そんなに驚くなよ、なんか傷つくぞ。

「肩でも凝ってるのか」

疲れきった金曜日のサラリーマンのような仕草に言及すると、肩に手を当てながら苦笑した。

「いえ、そういうわけでは。ただ慣れないことをしたので」
「なんだ」

言いにくそうに黙るのが癪に触って軽く睨みつける。なんだその目配せは。聞くなってことだとしたらそれは受け付けてやらんぞ。

「・・・DVD鑑賞を少々」

観念し微妙な苦笑で言う古泉の言葉を、丸っと信じていいか悩む所だな。大体こいつがDVDなんか持っているということが意外だった。

「一人でか」
「いえ、その・・・森さんと」

森さんと言うのはあの、機関のメイドさんでお馴染みの森さんでいいのだろうか。
孤島でお世話になった時の隙の無い佇まいが印象的だったが、詳しくは知らない。当然だ、俺が機関の内部事情に詳しくてもしょうがないだろう。
しかし機関ってのはそんなに仲良しなのか?プライベートでもそんな風に会っているなんて初耳だった。
まさか機関一同で休日のバーベキューやボウリングに勤しんだりするのだろうか。今度聞いてみよう。

「映画か?」

古泉が羅列したのは、俺でも聞いたことのある有名恋愛映画の数々だった。しかも何本見てんだおい。

「お礼、と言ってあの方のセレクションだったんです」

ご存知なのですね、って。お前は知らなかったのかと逆に聞きたいね。

「ええ。恥ずかしながらどれも初見でした」

古泉と恋愛映画ってのもなんだか妙な組み合わせだな。
あぁ、だけどこいつが女の子とデートとかするならぴったりなのかもしれない。気障ったらしい切ない系ラブストーリーでいい雰囲気になったりするのだろう。
それなのに古泉が速攻泣いて空気をぶち壊したりしたら面白い。俺だったら爆笑・・・までしたら失礼か。
しょうがねえなって笑うくらいはしちまいそうだ。・・・って何考えてんだ俺は!何故俺と古泉で映画に行く想定になった!

「何か面白いのあったか?」

思考をかき消す為に無難な質問をする。古泉は空に視線を向け思案し一つのタイトルをあげた。

「あーそれ見てないな」

でしたら、と古泉が微笑んだ。


「今度一緒に見てみましょう」

そう言った古泉の笑顔に、喜んでいる俺がいる。


口には出さんが、つまり俺はこいつに取り繕われんのが嫌でしょうがないんだ。

「そうだな」

この返事は、古泉が本気で笑っている気がしたから。


曲がったことが嫌い、なんて誰に影響されたのかね。
無駄に突き進む所はきっとハルヒの影響だ。なんていうか、少し違う気がするけど。


「上手、とでも言ってやるか」



笑うのに上手いも下手も無いだろう、そう言われたらなんて返したらいいかわからん。
だが勘弁してくれ、正直少しうかれている。よくわからん俺だって超絶混乱してるんだ。
古泉が笑うのが嬉しいーなんてどんな思考だ。どっからからの電波だと言われても否定できない。





少なくともよくわかるのが、俺にとってこいつが結構貴重な存在だったということだ。
笑う顔がこんなに嬉しくなるなんて、全く知らなかったからな。









END










09.1.31
加筆修正 2.4


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