朝起きたら 一緒に寝たはずの恋人が 子供になっていました。
先天性ラブアタック
その状況を視覚的に捉えた俺はとりあえずこれは夢だと判断して自分の頬を抓った。非常に痛い。
しかしこれくらいでこの有り得ない事態を受け入れるわけにはいかない。
次に両手で頭をはたいてみたが強く叩く程頭部に感じる痛みが増すだけだ。
認めたくない。認めたくない、だが結論は変わらないなら潔く認めてしまおう。
結論。夢ではない。
となると次に浮かぶのはハルヒのとんでもない能力だ。
秋に桜を咲かせ猫を喋らせた時も驚いたが、これも十分驚きに値する。
なんだ?今度は「古泉の子供時代が見たい」とでも思ったのか?
世の中願ったところでそう上手くいくはずがない・・・とでも言いたいところだがハルヒの能力に今のところ『不可能』という文字は無いようだ。
重い溜め息をついて俺は横に眠る古泉を見る。毛布をしっかり被った小さい子供は安らかに寝息を立てていた。
茶色いふわふわの髪。弾力の良さそうなほっぺ。閉じられた目を縁取る睫毛は細くて長い。
年の頃は幼稚園といったところだろうか。ご丁寧に俺が見たことも無い熊柄のパステルブルーのパジャマを着ている。
昨日こいつが着ていた無地の青の寝間着はどこにいったのだろうな。
少なくとも昨夜は裸で寝なくて良かった。本当に良かった。
たとえ相手が古泉だろうと傍目には一寸の狂いも無くショタコンの性犯罪者の出来上がりだ。俺にそんな趣味は無い。
それにしても見れば見る程に可愛らしい子供だ、お世辞抜きに。
こいつにもこんな頃があったんだな・・・と見ていて温かい気持ちになった。
ハルヒの能力には迷惑を掛けられることが多いが今回は役得かもしれない。古泉本人には絶対そんなこと言ってやらんが。
言ったところで調子に乗るのは目に見えてるからな。
「ん・・・」
あ、起きたか。もうちょっと見ていたかったのに。起きて話しだしてみろ、この可愛い顔でもいつものインチキ臭い話し方をされたら一気に冷める。
想像してみよう。・・・悪いがいつもより気持ち悪いな。
大きな目が俺を見て、しぱしぱと瞬きを繰り返す小さな古泉。
「・・・お兄さんだあれ?」
「え?」
前言撤回!というか中身も子供ならいいとは言ってないぞ?!
まさかハルヒの不思議能力じゃなく朝比奈さん関係のタイムスリップか?!これ約十年前の古泉?!!
まさかの精神子供化、見た目は子供で中身も子供!な状態に俺はすっかり困惑していた。
もしこの子供が古泉ならこの状況はとりあえず怯えるような物でしかないだろう。朝起きたら知らない場所で知らない奴といたんだ。
俺はとりあえず名前を名乗る。それを子供古泉が布団を握り締めて小さく復唱したのを確認すると、俺は電話を手に取った。
相手は長門だ。まずは状況把握がしたかった。
さすがの長門でもそこまでわからないかとも思ったのだが、長門は一通りの説明が済むとすぐにこの状況を説明をしてくれた。
「涼宮ハルヒの能力。彼は精神も外見も5歳児の状態に逆行している」
「やっぱりな・・・」
「大丈夫。記憶操作によって彼はあなたに預けられたことになっている様子」
随分都合のいい設定だがそれは助かる。俺は礼を言って電話を切った。少なくとも時間の経過で元に戻るらしいしな。
「お兄さん・・・」
「ん?」
声につられて振り返るが誰もいない。足下に目線を落とすと古泉がスウェットのズボンを小さい手で引いている。目が合うとぱっと手を離してしまった。
「なんだ?」
「電話おわった?」
心配そうに小首をかしげるのが可愛い。古泉を可愛いだなんて世も末だと思うがしょうがないだろう。
それに寝ていたのも可愛いが起きてもそれが損なわれないなんてすごいな。さぞかし幼少時代は近所で可愛がられたタイプだろう。
「ぼく、こいずみいつきです」
ああ知ってる。とは言わないでおく。
しゃがみこんで目線を合わせると、古泉は恥ずかしそうに下を向いた。今の古泉からは予想もつかないが小さい頃は内気なタイプだったのかもしれない。
「不安か?ごめんな」
「ううん。だいじょうぶ」
「お兄さんじゃなくてキョンでいいから」
その方が子供にしても言いやすいだろうと思っただけだったのだが、古泉は嬉しそうな笑顔になった。あだ名が嬉しいらしい。いちいち反応があどけなくてなんかこそばゆいな。
「ぼくも、いっちゃんでいいよ」
「いっちゃん・・・か」
無邪気な笑顔には悪いが呼べそうにない。すまん。
と、頭の中で手を合わせたところで、にこにこ(子供らしく)笑っていた古泉が背伸びをした。
「お?」
「えへー」
・・・今、頬にキスされた気がするんだが気のせいか?
そこ、自分でしときながらきゃーとか言って一人で恥ずかしがらない。こっちのほうがよっぽど恥ずかしいぞ。
「大好きな人にするんだって、せんせえが言ってたの」
ある意味憎らしい気もするがいつものように怒れないな。おい先生とやら、子供に何吹き込んですか。
「キョンくん、やだ?」
・・・やはり怒れないあたり、俺も甘いとは思ってしまうが。
嬉しそうに頭を撫でられるちび古泉を見て、とりあえずこの姿の写真を山ほど撮ろうと思った。
報復ではないが、元に戻ったらその写真を見せて散々からかってやろう。
end
07.12.18
加筆修正 08.2.16
出会ってすぐ恋に落ちる
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