騙しあい
















「好きです。月くん」

伸びてくるその手を、僕は意図もわからないまま受け入れた。
手は頬に触れ、僕の顔を引き寄せる。
すると竜崎の顔が近づいてきて、当たり前のように口付けてきた。

・・・そう、当たり前になってしまったこと。

いや当たり前に“されてしまった”とでも言ったほうがいいだろうか?

舐るようなキスはどんどん深くなっていき、頭を芯から麻痺させていくようだった。
だんだん余計なことが頭から消えていくのを感じる。
それと同時に、思考も何もかも支配されていくようだ。
残るのは疑惑と、不安と、焦燥感。それから奇妙な淋しさ。
愛しいなんて思わない。・・・ましてや愛しているなんて。
これは探りあいの延長線上にあることで、きっと竜崎だってそれは同じこと。
お前はキラなのか?そう探られているだけなんだ。
その為にお前はこんなことをするんだろう?百も承知だよ。そんなこと。
だからお前がそのこと・・・僕=キラに辿り着いたら終わってしまう。
例えるとすればGAME OVER。この関係の全てが終わるのだろう。



「竜・・・崎」
長いキスが終わり、僕はぼうっと竜崎を見つめた。
竜崎の手はまだ僕の両頬。竜崎は切なげな瞳で僕を見つめている。
「好きです・・・愛しているんです」
まるで叶わぬ恋に狂ったような苦しい声。こんな演技で、こいつは何を求めている?
いや、僕はそんなのわかっているだろう?
騙されてはいけない。求められているのは僕自身じゃない。
そんなことあるわけがないんだ。
「わかっているよ。竜崎」
そう言って僕から口付けた。


これは演技。竜崎を欺くための。 ――――本当にそうなのか?


いつか終わるただの腹の探り合い。 ――――終わってほしいと本当に思っている?


終わったとしても何も感じない。感じるわけがない。 ――――そう何度も言い聞かせた。


快楽に溺れるわけにはいかない。心を許してはいけない。決して求めてはいけない。
竜崎がLなのだから、殺すしか道はないんだ。
そうでなければ行きつく先は死刑台。
それが僕の目的へ進む第一歩・・・愛するなんてもっての外だ。





ピチャ・・・という音に思考を戻される。
ぞくぞくと背中を這い上がってくるもどかしい感覚。
キスを仕掛けたのは僕からだったのにいつの間にか竜崎の舌が僕の舌を絡めとっていた。
それに熱中するふり。・・・僕も、きっと竜崎も。
いつか終わる、ただのGAME。








・・・愛してなんか、いないんだ。










end







完成 04.10.20
どうしてどうして。あなたはそうして自分までも欺いて・・・。
だから応えてはくれないのですか・・・?こんなにも、こんなにも・・・










加筆修正 04.10.23
行間調整 06.4.15







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