握った手、握られた手



「獄寺くんって、結構傷多いよね」
十代目が俺の手を握り、呟いた。
しかし俺は心臓がバクバクいっていてそれどころじゃない。
十代目が何も言わず俺の手を見つめて、ちょっと貸してなんて言ってその手を握って(十代目の手は柔っこくて最高の感触だった)
手の甲、手のひら、指先までゆっくりと触れたのだ。(ちょっとゾクっとしてしまったとはとても言えない)
俺は無意識にゴクリと息を呑む。なんなんだろう。十代目は何を思って、この手に触れているんだろう。
混乱して頭が真っ白になりそうだ。どうすればいいんだ!
十代目がぽそりと呟いたのはそう考えていた時だった。

「そうですか?」
「そうだよ。ここと、ここと、ここも。これはダイナマイトのせい?」
左手を俺の手に添えて右手で傷を一つ一つ触る。最後に見上げられて、ちょっとくらっとした。
「え、えーと・・・初めのはダイナマイト、二つ目は敵のナイフで、三つ目は・・・これもダイナマイトだったと思います」
「じゃあこの辺もそうだ。火傷っぽいもん」
「わかるんですか?」
「うん・・・なんとなく」
うつむいた十代目の声が悲しそうで、俺は慌てた。
どうしたんだろう。何か気に障ったんだろうか。
傷がある事で戦闘能力の低い奴だと思われてしまったんだろうか。
「獄寺くんって、無茶するよね」
「え?」
「うん。無茶ばっかりする。それなのにいつも、俺の顔見ると笑うんだ」
俺の思考を他所に十代目は言葉を紡いでいく。・・・ひどく、ひどく悲しげな声で。
顔を上げた十代目の表情を見て、俺はどうしたらいいのかわからなくなった。
さっきと同じだ。
さっき、十代目が俺の手に触れた時はドキドキして恥ずかしくってどうしたらいいのかわからなくて、固まった。
でも今は違う。十代目が泣きそうな顔をしている。
目が潤んで、歯を食いしばって、じっと俺を見ているのだ。
どうしよう。十代目を泣かせてしまった。どうしたらいいのだろう。
そう思うのに、泣かないで欲しいのに、俺はまた固まっている。馬鹿みたいだ。
「じゅ、十代目・・・?」
「俺、それを見るたび悲しくなる」
「泣かないでください、十代目」
「泣いてないよ」
声を出せば、みっともなくうろたえてしまう。なんでこんな時にちゃんと出来ないんだろう。
己の不甲斐無さに悔しささえ覚える。
手に力を感じた。ぎゅっと握られた手。温かい、十代目の手。
「大事にしてよ。獄寺くんの一部なんだから」
この人の優しさが、とても好きだ。
この人の優しさに、この温かい手に、これから試練と悲しみと責任が強く圧し掛かるのだろうか。
ふとそう思って悲しくなった。この人の綺麗な手が、汚れていくのだろうか。

嫌だ。この人の手を汚したくない。手も、心も。綺麗なままでいて欲しいのに。
俺が守ればいいのだろうか。守れるのか?守りきれるのか?
「頼むよ。俺、獄寺くんが傷つくのは、嫌だ」
十代目の搾り出すような声は、俺をより一層切なくさせた。
「はい・・・」
柔らかく、綺麗な、白い十代目の手を。
ごつごつと、少し骨ばった、火傷と傷だらけの俺の手が握り返す。
いいのだろうかとも思ったけど、間違っていなかったみたいだ。
十代目は少し嬉しそうに微笑んだから。
あなたが笑ってくれた。それだけで俺は、今が幸せなんだ。


明日の行方は見えないけど、あなたがいてくれればそれでいい。


この手は絶対に、離さない。











end










06.9.8
加筆修正 06.10.1

あなたの為に何ができる?
どうすればこの手を離さずにずっと歩いていける?









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