1・音信不通





一日目の夜 ふと思った。あいつに今日は会っていない。
あいつ、というのは他でもない浦原のことだ。
俺から会いに行かなかったのに特に理由はなく、あいつも訪ねて来なかった。
・・・たまにはいいか。
そう思って特に気にすることもなく眠りについた。















三日目の放課後 グループでの課題発表の為に、水色と啓吾に図書館に引っ張られた。
面倒くさいけど成績に関わる物だからちゃっちゃと資料を集める。
啓吾が「こんなんまとめられっかー!」と思わず声を上げ、司書の人に怒られた。
・・・今日も浦原には会えなかった。















五日目の昼 そういえば最近浦原の奴を見ないな、とルキアに言われた。
会いにいかないのかと言われたが、
今日の放課後も課題発表の準備をすることになっている。
こんなに時間のかかる課題を出す教師は間違っていると思った。
だから会いにいけないと言うと、ルキアは変な所で我慢をするなと笑っていた。
別に我慢なんかしていないのに。















六日目の夜 浦原がいつも出入りしていた、部屋の窓を開けてしばらく外を見ていた。
だけどいつまで経っても静かな住宅街の景色は変わらず、
馬鹿らしくなって眠ることにした。
アイツが来るんじゃないかと、なんとなく窓の鍵は掛けないでおいた。


















八日目の夜。アイツに最後に会ってから、一週間が過ぎた。
俺はなんとなく最後に会った時の会話を思い出していた。
・・・特に当たり障りの無い、普通の会話。浦原が怒るようなことは無かったと思う。
だけどアイツは姿を現さない。何故だろう?と考えても答えは出なかった。
今日で課題発表も終わったから。明日からは放課後が空く。
自分自身の分は早く終わったのだがなんだかんだ啓吾や水色の手伝いをしていたら思ったより大変で、
浦原商店に行く暇など無かったのだ。
だけど俺が忙しかろうとなんだろうと、俺の都合さえ構い無くあいつはいつもやってきたのだ。俺の元に。この部屋に。
それがこの一週間はまるで無かった。
認めたくないけれど、淋しいと思っている俺がいる。認めたくは,無いけれど。
なんでアイツは平気なんだろう。会いたいと思っているのは俺だけなのか?
そう思うとなんだか少しむかついて、
二日連続で開けておいた窓の鍵を今夜は閉めておこうと決めた。
・・・別に意味は無いかもしれないけれど。浦原が来ないのならば。
もう寝よう。・・・明日の放課後は、浦原商店に顔を出すことにして。
仕事が忙しいのかもしれない。只の気まぐれかもしれない。
だけどもう会いたいという気持ちを我慢出来そうには無いから。
何しに来たんですか、と言われてもいい。
その時は「会いたかったから」と言ってみよう。
窓の鍵を閉めてカーテンも閉め,ベッドに寝転がる。
そしてとろとろと眠りにつきそうになってきたとき、
何かぶつかったのかガラス窓がコツンとなった。
何かと思っていたら、窓のすぐ外で聞こえる声。

「黒崎サーン。開けてくださーい」
「・・・浦原?」

起き上がってカーテンを開けると、そこには浦原の姿があった。
いつもと変わらないように思えた口調は、少し焦っているようにも聞こえたけど。
俺はすぐさま鍵を開け,窓を開いた。
すると浦原が間髪入れず抱きついてきて、そのまま部屋に転がり込んだ。

「わーん、黒崎サン会いたかったっスすよー!!」
「お、おいっ!なんだよ!」

慌てて押しのけようとするけれど余計強く抱きしめられて離れることが出来ない。

「嫌です!黒崎サンがいくらアタシがいなくても平気だろうと、アタシは黒崎サンがいなくちゃ駄目なんです!
離しませんよ、もう我慢の限界です!!」
「いきなりわけわかんねぇこと言ってんじゃねぇよ!」

叫ぶように話し続ける浦原を制止して、とりあえず起き上がった。
・・・それでも、奴は抱きしめている手を離してはくれなかったけど。
お陰で身動きさえ出来ない。
しょうがないから諦めて、極力静かに抱きしめられる。
浦原はひたすら強く抱きしめるだけでたまに「あー黒崎サンだー・・・」と安心したかのように呟いていた。
それで大分落ち着いた頃、俺は浦原に抱きしめら れたまま訪ねた。

「で?どうしたんだよ」
「黒崎サンが会いに来てくれるか試してたんです」
「はぁ?」
「だって!いつもアタシが呼ぶか、アタシが会いにくるかのどっちかばかりじゃ無いっスか」

つまり、俺が自ら浦原に会いにくるか賭けていたということだ。
詳しく聞いてみれば、いつも俺たちの現状を見ている夜一さんに
「押してばかりでなく、たまには引いてみろ」というようなことを言われたらしい。
考えてみれば確かに、黒崎サンから会いに来てくれる回数は少ない。
ひょっとして愛されてない?いや、そんなはずは無い。
会いに行かなければ、黒崎サンだって淋しくなって会いに来てくれるはず!と。
そう思って毎日毎日待っていた。
だけど何日経っても会いに来てはくれない。
完璧な音信不通だ。
気になりすぎて、仕事が『少し』疎かになった(おかげで従業員は大迷惑だった)。
けど、何より。何よりも・・・

「会いたいんです。我慢出来なくなったから、来ちゃいました」
「悪い浦原・・・忙しくて」

事情を説明してすまなそうに言うと,浦原は恨めしそうに睨んで来た。

「事情はわかりましたよ。だけど黒崎サンは淋しくなかったんですか。アタシはこんなに淋しかったのに」
「それは・・・」
「いいんですいいんです。どうせアタシの独り相撲なんスよね。こんなに黒崎サンを好きなのは、アタシだけなんですよ・・・」
「・・・淋しかった,に決まってんだろ」

いじけたポーズでをしていた浦原が面食らったかのような顔をする。
そしたら俺はさっきまで平気だったのに、急になんだか恥ずかしくなった。

「な・・・なんだよ!!」

そんな俺を見て,浦原は嬉しそうに笑っている。

「いえ。だったらもう、お互いに我慢なんてやめましょうね」

とりあえずもっと補給していいですか?と、浦原はまた強く俺を抱きしめた。




end


05.6.16
会いたくなったら会いに行くよ










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