『血さえも甘く愛おしく』





十二番隊・技術開発局の一室。日当たりのいい角の部屋は阿近が仕事によく使う部屋だった。
少し広いから物も十分に置けるし何よりとても静かで落ち着ける。気がついたらここは『自分の仕事部屋』状態になっていた。
しかしここ最近一人で仕事が出来ることはほぼ皆無。


・・・後ろにいる、あの男のせいで。



「阿近さん、ソロバンとってください」
「自分で取れ」
「阿近さんの方が近いから」
「そんなことで怠けるなよ」

今日もいつもと同じようにこの部屋にやってきて、
定位置・・・壁際の俺の机の斜め後ろ、ちょうど部屋の中央に机を置いて隊の書類に四苦八苦しているようだ。
あの机だって一体どこから持ってきたのか・・・気がつけば奴は毎日のようにここに仕事をしにきている。

「阿近さん」
「何だ」
「そっち行っていい」
「駄目だ」
「何でですか」

筆を止めて振り返れば、書類を手でまとめてこっちをジッと見ている。
ここで甘い態度見せたら終わりだ。調子にのって邪魔をしだすに決まっている。

「いいじゃないですかー別に」
「うるせぇ仕事終わったんなら帰れ」
「・・・イタ」

と、修兵が急に静かになる。修兵の指には赤い血が盛り上がっている。

「どうした」
「あ、いえ紙で・・・」

どうやら紙で人指し指の先を切ったようだった。変なところでそそっかしい奴だ。

「・・・阿近さん拭く物ないですか」

見回したが何も見当たらない。修兵を見れば血はどんどん流れ掌まで伝っている。

「貸せ」
「え」

手首を掴み修兵の手に左手を添え人指し指をぺろりと舐めた。
途端に口の中に鉄のような味が広がる。

「・・・?どうした修兵」

見上げた修兵の顔は真っ赤で、空いてる手で自分の口を覆っている。

「ねぇ誘ってんの?」
「・・・はぁ?」

何言ってるんだこいつは。
思っている間に気がついたら抱きしめられていて。

「ねぇこのあと・・・」
「駄目だ」
「じゃあ阿近さんの指舐めたげようか」
「馬鹿か」

抱きしめられながら、何故か少し嬉しくて。血もなんだか甘い気がしたな、とまで思えてきた。




絶対に言ってやらないけど。




end







05.11.8

今が心地いいなんて 言ったらどんな顔するだろう?










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