月見れば浮かぶ あの人の面影








明かり取りの窓の外、漆黒の夜空に月が浮かぶ。

今夜は三日月。淡く、だが神々しい光を優しく湛えている。

俺はそこが少し寒い廊下だということも忘れ、その月に見入っていた。






「・・・起きてたの?黒崎くん」

横を見れば、いつからそこにいたのか・・・井上が立っていた。
俺がぼんやりと月を見上げていて、そのせいで気がつかなかったのかもしれないけど。

「どうした?こんな時間に」
「お水飲もうと思って。それによく眠れなかったの」

そういう井上は疲れの色濃く残った顔をしている。
あれだけ毎日走り回ったのだからしょうがない。だけど明日は・・・

「明日、遂に帰るんだね」
「そうだな」
「だからかな?ドキドキして眠れないのかも」

と井上が小さく笑った。つられて俺もかすかに笑う。
長かったここでの生活が終わりを告げようとしている。
明日現世への門を開けてもらえば、ついに向こうの元の世界に帰るのだ。
これからどうなるのかはわからない。
しかしその不安以上に・・・それ以上に、何かが落ち着かない。
寝付くことが出来なくてふらりと寝床から出て。
歩いていた廊下に差し込む光に引かれるように 窓辺に近付き、
見上げた空には綺麗な・・・綺麗な月の淡い光。
その光は、誰かに似ていた。
人を惹きつける光。とてもとても綺麗なのに、手を伸ばしても届かない。
優しいのに、残酷な人。どこか甘いのに、何故かとても怖い人。
あの光が優しすぎるから。温かすぎるから。
ああだから落ち着かないんだ。
現世に帰るとは即ち、あいつのいる世界に帰るという事。
月を思わせる色の髪と、月のように怪しげな雰囲気を持つあの男に・・・明日はきっと会えるのだから。

「綺麗な月だね」
「そうだな」


待っていてくれると言ったあの人は、今頃何をしているだろう。
暑いのは苦手だと言っていた。まさか夏バテなんてことはないよな?
そうなっている姿を思い描いたら、少し可笑しかった。
こんな風に、もう、あいつを思い出す事は無い。
だってこれからは直接会う事が出来るのだから。
月に重なって浮かぶのは あいつの優しい微笑みだった。









end













05.6.12
WJ28発売前に。
浦原と一護の再開の予感にうずうずして前夜に書き、日記に載せてました。










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